飛島建設(株)・住友林業(株)・ミサワホーム(株)の3社で共同開発
地盤と丸太による軟弱地盤対策工法LP-SoC工法の評定を日本建築センターで取得
2020.02.20
グループニュース
ミサワホーム
飛島建設株式会社(東京都港区港南、代表取締役社長乘京正弘)、住友林業株式会社(東京都千代田区大手町、代表取締役社長市川晃)、ミサワホーム株式会社(東京都新宿区西新宿、代表取締役社長執行役員磯貝匡志)(以降「3社」)は、軟弱な地盤に丸太を打設し、地盤と丸太の複合地盤で建築物を支える「丸太打設軟弱地盤対策&カーボンストック工法(以降「LP-SoC工法」)」の評定を一般財団法人日本建築センター(以降「BCJ」)より2020年1月10日付で取得しました(BCJ評定-FD0577-02)。2018年1月に、同センターでは初となる木材による地盤補強工法「丸太単体の支持力の設計手法等」に対する評定を取得しましたが、本工法はそれをさらに発展させコスト削減を行いました。今後3社は、木材活用地盤対策研究会を通じ、SDGs時代のバイオエコノミーを実現する軟弱地盤対策工法として、戸建て住宅や集合住宅と共に、非住宅の建築物などへLP-SoC工法を幅広く展開する予定です。
<背景>
軟弱地盤上に建物を建築する際には、建物が不同沈下などしないよう地盤を補強することが重要になります。木杭は1950年代頃まで多く使われてきましたが、戦前・戦後の森林資源の枯渇、地下資源の利用拡大などによりほとんど使われなくなりました。一方で、気候変動が深刻化する中、軟弱地盤対策に木材を使用することは、木材を大量かつ長期的に使用することで、新たな植林につながるとともに炭素を地中に長期固定するので、温室効果ガスを純減させ、持続可能な安全安心社会の構築に貢献できます。そこで、3社は、木材活用地盤対策研究会を通じ、丸太を軟弱地盤に打設し地盤を補強するLP-SoC工法の共同開発を進めています。
図-1 既評定と今回のLP-SoC工法設計方法の比較
<工法の特長>
今回のBCJ評定の取得は、2018年1月に既に取得している地中における丸太単体の鉛直支持力に関する評定を発展させたものです。既評定では、スウェーデン式サウンディング試験*1(以降「SWS」)結果に基づく丸太単体の鉛直支持力の設計手法、施工方法、現場品質管理方法が認められていました。
今回は、これに加えて、標準貫入試験*2(以降「SPT」)、および、SPTとせん断試験*3の組み合わせによる設計が可能になりました。SWSによる評価だけでなく、SPTや、SPTとせん断試験の組み合わせの結果を用いることで地盤の評価精度が向上し、試験方法に応じて丸太の特長を活かし鉛直支持力を合理的に評価できるようになりました。また、軟弱地盤であっても建築物を支える力は決して小さくありませんが、今まではこれを無視していました。そこで、この効果を積極的に見込み、地盤の支える力に、地盤だけでは不足する分を丸太の鉛直支持力で補い、地盤と丸太の両者で建築物を支える複合地盤としての設計方法を確立しました。
このようにすることで、丸太を適切に配置することができ、より経済的な施工が可能になりました。これにより、施工コストは、既評定による方法に比べて大幅な低減となり、条件にもよりますが,従来工法と比較しても同等レベルかそれ以下になる予定です。
また、丸太は、基本的に頭部を地表から0.5m以深の常水面以深に設置します。これにより、丸太には腐朽や蟻害による生物劣化が生じなくなります。さらに、丸太頭部と基礎底版との間に距離を設けることで、丸太による基礎底版への局部的な荷重負担を低減し、かつ、荷重を丸太間の地盤へ確実に伝達できるようになりました。
加えて、LP-SoC工法は,丸太を大量にかつ長期的に使用することで、省エネ効果と炭素貯蔵効果により、深刻になってきている気候変動緩和に貢献しながら、持続可能な安全安心社会の構築を実現していきます。
図-2 LP-SoC工法施工方法の概要
<施工方法>
施工は、皮を剥いだ生材の丸太を地表面から0.5m以深の地盤中に圧入後、丸太頭部を透水性の低い土質系材料の被覆土でキャッピングすることで空気を遮断し、その後、充填材(砕石)をバイブレーターで締固めて孔を充填します(既に実用化しているLP-LiC工法と同じです)。地盤がやや固いなどの理由で、丸太を鉛直に打設しにくい場合は、丸太打設に先行して、先端閉塞した鋼管を回転圧入し、所定の深度に達した後に回転しながら引き抜き、その後に丸太を圧入します。
<工法の展開>
LP-SoC工法は、建築物の高さ、軒高、階数や構造に関係なく、接地圧が50kN/m2以下で延べ面積が3,000m2以下の建築物が対象で、戸建て住宅や集合住宅に加え、事務所、幼稚園、高齢者施設、集会所、店舗、工場、倉庫などの非住宅物件への適用も想定しています。建物本体だけでなく、基礎地盤にも木材を使用することで、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」への対応や、森林環境譲与税の木材利用先への活用を考えています。
島建設が本研究開発計画の立案、進捗等の総括管理、実証実験の実施を担当し、3社で研究開発、実用化の検討を行い、住友林業とミサワホームがこれまでの経験を活かし、BCJ評定取得の対応を担当しました。
今後3社は、木材活用地盤研究会を通して、さらなる研究開発を進め、適用範囲の拡大とコスト削減を行い、気候変動緩和への貢献と、持続可能な安全安心社会の実現を目指します。
1:スウェーデン式サウンディング試験:
地盤の硬軟や締まりの程度などを判定する地盤調査法の一つ。先端がキリ状のスクリューポイントと鉄の棒(ロッド)に荷重を加え、または、荷重を加えたままロッドを回転させ、所定の貫入量に要した荷重と回転数を計測する。
2:標準貫入試験:
地盤の硬軟や締まりの程度などを判定するとともに、土のサンプリングが可能な地盤調査法の一つ。サンプラーを先端につけたロッドを打撃により地盤に貫入させ、30cm貫入するのに要する打撃数を計測する。サンプリングした試料で土質試験することができる。
3:せん断試験:
貫入に要する回転数や打撃回数により地盤のせん断強さを推定するのではなく、一軸圧縮試験や三軸圧縮試験により土のせん断強さを直接求める試験方法。
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